加齢黄斑変性

加齢黄斑変性は主に50歳以上の方がかかる網脈絡膜の病気です。

平均年齢が72歳程度で、50歳代でかかる方はかなり少ないです。40歳代の加齢黄斑変性は極めてまれです。50歳前半より若く加齢黄斑変性の診断を受けた場合、似ているが別の病気の可能性をまず考えるべきで、黄斑疾患の専門的な施設の受診をお勧めします。

加齢黄斑変性は先進国における法的失明の第1位の病気で、米国では糖尿病網膜症による失明と緑内障による失明をあわせたより、さらに多い方が視機能を失っている病気です。日本では1,000人に1人程度とされていましたが、患者さんが増えているという印象があります。一方、米国では加齢黄斑変性は減り始めています。

加齢黄斑変性は、大きく分けて二つの最終型があります。一つが滲出型加齢黄斑変性、もう一つが萎縮型加齢黄斑変性です。最近は一つの目に両方の成分が混在していることが増えてきている印象があります。いずれも、多くの場合は数年間かけて読字が困難な視力に至ります。滲出型加齢黄斑変性に対しては抗VEGF薬(ベオビュー、アイリーア、ルセンティス、マクジェン)、光線力学療法(ビスダイン)、光凝固術などの治療方法が開発されてきました。萎縮型加齢黄斑変性については欧米では治験が行われていますが上梓されている薬はありません。日本では15年ほど前には萎縮型加齢黄斑変性はきわめて稀でしたが、最近急激に増加しています。

当院では、ひとりひとり病状を説明し、より確率の高い治療をお勧めしています

加齢黄斑班変性にたいする抗VEGF薬の治療について、多くの臨床研究がおこなわれてきました。当院ではVIEW Study, SEVEN-UP Study の結果を特に大事と考え、病状が落ち着いている患者さんについては、3ヶ月に1度の定期的な注射投与をお勧めしています。ただし病状が落ち着いたということを何を基準に判断するのかが、非常に大事なところです。萎縮型の要素が多くを占める方、非典型的な病状の方には、別の選択肢をお勧めすることもあります。たとえば、3回注射ののちは、全く注射をしないで様子をみている方もおいでです。1ヶ月半ごとに注射を続けている方もおいでです。

病勢がさかんになる前に治療をする、という原則です。診断当日ないし数日以内の治療開始としています。消毒は白内障手術が可能なレベルで丁寧に行っています。

加齢黄斑変性については、ルテイン・ゼアキサンチンを主体としたサプリメントによって、反対眼の発症の確率を減らせることが大規模臨床研究により証明されています(AREDS, AREDS2)。

因果関係の証明のための臨床研究の実施には莫大な費用がかかるため、ほとんどの病気の場合はサプリメントの有効性の根拠がはっきりしていない中、特別な状況といえます。

マルチビタミンに含まれているルテイン・ゼアキサンチンの量よりもずっと多い量の摂取が必要と言われています。

病変の進行度合いはどう評価されているでしょうか。ヒトにもともと備わっている機能を標的とする薬は、個人差が大きく出ることがよくあります。細菌の機能に働きかける抗生物質が誰にでも効果があるのと対照的です。抗VEGF薬によく反応する患者さん、中程度反応する患者さん、ほとんど反応しない患者さんなど、グラディエーションのようになっています。大前提として当院での抗VEGF薬の投与間隔は大規模な臨床試験の結果を最重要視しています。ただし生物の個体間の多様性は驚くような「はずれ値」をもたらすことが多いのです。大規模な臨床試験ははずれ値を追求することがそもそもの目的ではありませんし、試験に費用がかかりすぎて非現実的です。しかし現場の診療で大事なのは経過が思わしくない「はずれ値」の患者さんに早く気づき、手を尽くすことだと思います。経過の悪い患者さんをどう判断するのでしょう。加齢黄斑変性はもともと自然史というものがあり(無治療で行くとどうなるかという知識)、それと頭の中で比べることが必要です。加齢黄斑変性は無治療でも、そのときは良くなったり悪くなったりすることがある病気です(数年という単位では無治療では悪化します)。加齢黄斑変性の自然史をきちんと理解する機会をもった医師はたいへん貴重な存在です。抗VEGF薬を注射し続けても自然史と変わらない場合は、光線力学療法やステロイド併用療法など、異なるメカニズムの治療法に踏み切るべきと考えています。

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